答志島は、三重県の伊勢湾口の西岸に位置する鳥羽市の、鳥羽港の北東約1.4kmの伊勢湾口海上の離島である。島の北東部に答志地区・和具地区、南西部に桃取地区がある。答志島の人口、世帯は、平成17年現在、2,957人、758世帯であり、最近10年間で1割強の人口減少を見ている。
基幹産業は、水産業で、全就業者の半数近くが漁業に従事している。漁業種類はひき網、刺網、巻網、定置網、一本釣り、はえ縄、潜水(海女)、たこ壺漁等と多岐にわたっている。島内には、民宿も30件程あり、観光業を中心とする第3次産業の就業者も多い。
答志島の答志地区には、“寝屋子制度”という伝統的な、地域が子どもを育てるという特有の制度が残っている。江戸時代には日本の農山漁村に普通に見られた若衆組の風習で、数えの15歳の男子が、寝家親と呼ばれる地域の人格者の家で寝泊まりしながら、妻帯とともに退会する。そのことが、島内の後継者世代の定着につながっている面がある。
「島の旅社」は、鳥羽市の行政主体の地域振興戦略プランの議論の中で、沖合4離島(神島、菅島、答志島、坂手島)の振興を目的に平成16年に設立された主に漁村ツーリズムをテコとした地域おこし組織であり、事務所は、答志島の桃取地区の旧漁協事務所にあり、会長1名(答志島桃取地区町内会長)、副会長3名(答志島答志地区町内会長、和具地区町内会長、鳥羽磯部漁協桃取支所長)、会計1名(答志島旅館組合)、監事1名の下に、実質的な現場の活動を担う事務局が置かれている。事務局は、女性7名で構成され、リーダーは大阪からノリ養殖漁家に嫁いだ女性であり、現場のインストラクターはその都度、地域住民に依頼している。
「島の旅社」が主催する漁村ツーリズム企画は、「島人がもてなすウェルネスの旅」、「海女小屋体験」、「島人ふれあい体験」、「浮島自然水族館」など多様であるが、特に、漁村の路地を資源と捉えた「路地裏つまみ食い体験」はユニークである。路地のいたるところに地場の食材が配置され、参加者は、路地を散策し、地元の人と交流しながら、これらの食材を持ち帰り、全員で調理して食べるという趣向である。通常、お盆を除く夏休み期間内の土曜日(5日間程)に実施しており、参加料金は、中学生以上が3,500円、小学生が2,500円と設定されている。ただし、漁村の路地は、日常生活の場であり、プライバシーの問題もあることから、参加人数は1日30人程に限定している。
取組の特徴 | ・漁師の女将さんが、既存の漁業、体験民宿にはできない生活をテーマにした体験プログラムを展開している。 ・島の旅をテーマに、ウエルネツアーを三重大学と提携して実施。 ・Iターンの女性リーダーの存在 |
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地区の課題 | ・地域資源の実践的な活用 ・漁師の主婦によるコミュニティビジネス |
背景・経緯 ・地域の背景、取組経緯 |
・離島振興の一環 ・大阪から海苔養殖漁家に嫁入りした女性リーダーの存在 |
効果 ・地域への効果 |
・地域資源を活用した女性の地域活性化活動による経済効果、社会効果(地域の誇り、知名度(ブランド性)アップ) |
成功要因の評価 | |
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体制・組織 ・取組体制、組織づくり、 ・自由・活発な議論 |
・島の旅社(任意団体)10名の島の女性スタッフ ・リーダーを中心にワイワイガヤガヤ楽しみながら事業を推進。 |
援体制 ・行政による支援 ・中間支援組織の存在 |
・鳥羽市、三重大学、研究者によるネットワーク |
人
・リーダーの存在 ・事務能力、IT技術 ・人材育成への取組 ・外部人材の活用 |
・大阪から島に嫁に来た山本さん(ヨソ者)のフレッシュな感覚と、地域資源を素直にとらえる完成が原動力 ・市の離島振興の取組が相乗効果を上げた。 |
計画(ビジョン・戦略)の的確性 ・効果の評価、共有 ・既存ストックの有効活用 |
・主婦による無理のない計画と事業実践。 ・日常生活をプログラム化する柔軟な発想が個性となっている。 |
マスコミ・メディアの活用 ・マスコミへの情報発信 ・WEB・Blog等の活用 |
・メディアへの露出が効果的に行われている。 ・浮島水族館など、限定ツアーが強い情報発信につながっている。 |
課題の克服 ・課題への対応、工夫 ・阻害要因排除への取組 |
・既存事業と競合しない領域を見つけ、うまく棲み分け。 ・漁師のおかみの副業から出ないことが戦略 |