各種取組の紹介

大学・企業との連携事例

漁村地域と企業・大学との連携に関する環境整備の目的

漁村地域において多様な主体と連携した地域づくりを行うことは、人材確保、資源の有効活用、情報発信、財源確保の面でも有効であり、その連携・協力先として、企業や大学が非常に有効なパートナーになり得ます。漁村地域が大学や企業と連携して活力ある漁村づくりに取組む活動について整理しておりますので、地域での活動にご参考下さい。

漁村地域と大学との連携事例の収集

連携の形態としては、研究機関としての大学の技術を活かした「共同研究」から、「水産資源のブランド化」、「観光メニューの構築・ツアーの実施」、「産学官連携アンテナショップの運営」、「農商工連携」、「地域との交流」など学生の教育的観点からの連携、地域の活力づくりに主眼をおいた取組みまで多様です。

No. 地域名 主な連携主体 取り組みの概要
1 岩手県
大船渡市
・越喜来漁業協同組合
・北里大学水産学部
・大船渡市
【共同研究・地域との交流】
・平成16年に、「北里大学水産部・越喜来漁業協同組合連携推進会議」を設立。
・喜来漁協青年部が、大学の指導を受けながらヒジキ養殖試験を行うなどの交流活動開始。その後も地域振興に向けた意見交換がなされ、特産であるホタテの寄生虫に関する共同研究など、地域ニーズと研究シーズのマッチングを行う。
・学生漁業体験実習事業として、浦浜川サケマス孵化場における体験実習、ワカメの湯通し塩蔵加工体験実習、ロープワーク実習等を実施。
2 北海道
留萌市
・新星マリン漁業協同組合
・北海道東海大学
・留萌市
【共同研究・地域との交流】
・漁協・大学・市が連携して漁業振興に係る改善事項、新たな導入が必要とされる事項及び大学における試験研究テーマとの共通項目について、海を中心に調査・試験研究(臨海実験所設置)を実施し、産学官相互の利益を得るものとする(教員や研究室等のフィールドワークとしての研究事業に自治体が協力)。
・新星マリン漁業協同組合、北海道東海大学、留萌市の産学官連携による海洋環境等の共同調査試験研究を実施し、基礎データの習得により漁業振興に係る知見を共有。
3 青森県
青森市他
・あおもりナマコブランド化協議会:青森市内の漁業団体や加工業者、弘前大学で構成(事務局:青森市) 【水産資源のブランド化】
・弘前大学と青森市との連携に関する協定締結(平成19年5月7日)から、多分野における連携協力協定を締結。
・陸奥湾のナマコに着目して、ナマコの生態調査・資源管理等に関する共同研究等を実施
・さらには、平成20年に「あおもりナマコブランド化協議会」を設立し、ナマコ関連商品を開発するとともに、「あおもりナマコ」のブランド化に向けた各種取組を実施。本協議会から、本物のなまこを乾燥して色づけした「ナマコストラップ」が開発され人気を博する。
4 福井県
小浜市
・福井県立大学生物資源学部海洋生物資源学科
・小浜市役所
【共同研究・地域との交流】
・若狭小浜を代表する魚種の科学的研究「若狭の魚はなぜうまいか」への研究助成(平成17年度〜平成18年度)・・・若狭小浜には、奈良・平安の時代より、豊かな海産物などを都へ献上する「御食国」として栄えた歴史がある。現在も、若狭がれい、若狭ぐじなどは若狭ものブランドとして珍重されているが、このような「若狭もの」の鮮度やおいしさに対する科学性を追及するため、大学との連携を図る。
・市民、行政、事業者等で構成される「県立大学小浜キャンパスを育てる会」による学生や教職員との交流を、開学以来実施しており、地域の大学と連携を深めるために継続されている。
5 佐賀県
唐津市
・九州大学大学院農学研究院
・唐津市
【共同研究】
・地域資源である「ケンサキイカ」の資源管理と蓄養技術の開発事業を、産学官連携により共同研究し、もって関東地区の消費市場への販路開拓につなげることにより漁家経営の向上を図る。
・自治体が大学に調査を委託。教員や研究室等のフィールドワークとしての研究事業に自治体が協力する形で実施
6 長崎県
大村湾
・長崎大学
・長崎県
【観光メニューの構築、ツアーの実施】
・大村湾をテーマとした体験型観光の拠点化による活性化方策の検討調査の実施。
・大村湾の自然資源や歴史的遺構をめぐるモデルツアーを実施。
7 神奈川県
三浦市
・明治大学
・三浦市
【産学官連携アンテナショップの運営】
・明治大学と三浦市が連携して三浦特産物のアンテナショップ「なごみま鮮果」を東京都千代田区神田錦町で展開。
・仕入や販売などの店舗運営には明治大学商学部熊澤ゼミナールの学生たちが関わっている。
8 北海道
寿都町
・寿都町漁業協同組合
・北海道東海大学
・寿都町
【共同研究・地域との交流】
・北海道東海大学が「寿都湾全域を水産学に関する調査・研究・研修に利用することにより、水産学の進展と地域水産業の発展に寄与する」ことを目的として、平成8年に臨海実験所を開設。これを機に、東海大学・寿都町役場・寿都町漁業協同組合が、地域振興に取組むために協定を締結し、臨海実習体験を中心に、実習船体験乗船等、様々な活動を行ってくる。
・寿都湾の地域環境や水産資源を有効活用することで、寿都町のPRとなっているとともに、東海大学の学生が、地域との交流や様々な取組に参加することによって、町全体の活性化にもつながっている。また、大学施設の開放や体験学習等により、教育環境の向上が図られている。
9 岩手県
釜石市
・(協)マリンテック釜石 【農商工連携】
・釜石近郊では、大量の水産加工廃棄物、未利用水産資源の処理が問題となっていた。
・これらの水産加工残渣から、生活習慣病の予防等に効果のあるとされる機能性成分を大学との共同研究により抽出。製品化し販売を行う。

漁村地域と企業との連携事例の収集

企業との連携についても、「農商工連携」、「水産資源のブランド化」から、「企業の人的資源の活用」、「CSR活動」まで多様です。

No. 地域名 主な連携主体 取り組みの概要
1 石川県
珠洲市
・県漁協すず支所
・(株)道水
・石川県珠洲市
【水産資源のブランド化】
・(株)道水は、平成21年より石川県の能登沖においてマグロの畜養事業に着手。地元漁協は、道水に組合員に準ずる漁業権を与える代わりに、畜養で太らせたマグロの一部を譲り受け、市と連携して「能登本マグロ」としてブランド化を図り、地域の活性化につなげようと取り組んでいる。
2 北海道
根室市
・落石マリンビジョン協議会
・(株)ANA総合研究所
【企業の人的資源の活用】
・根室市の落石マリンビジョン協議会では、「バードウォッチングツアー」の企画を検討しており、平成20年度、総務業の「地域力創造アドバイザー事業」により、(株)ANA総合研究所の研究員を招き、実現化に向けて内容を精査した。
3 全国 ・三洋電機株式会社他 【CSR活動(環境保全活動)】
・ビーチクリーンアップキャンペーンの実施:海岸のゴミを拾うとともにゴミの種類と数を調査し、発生源から対応策を考える環境保全活動。
・1991年から2006年までに1,228名の社員ボランティアが参加。(国際的な環境保全活動に企業社員が参加する形で実施)
4 大阪府 ・大阪府漁業協同組合連合会
・(株)ベストパル
・西鳥取漁協
・下荘漁協
・(株)ショクシン
【農商工連携】
・地元産真だこを利用した新商品の開発・販売
・地元水産物の知名度アップを図り地域の活性化につなげるため、大阪府漁業協同組合連合会が企業や関係団体と連携することにより、大阪湾産真だこ「泉だこ」の品質の安定、付加価値の向上、手軽に調理が可能な商品の開発に取り組む。
・大阪府漁業協同組合連合会と(株)ベストパルが連携して「泉だこ」の特徴であるやわらかさや旨みを引き出す加工技術を研究・開発。この技術を用いて、手軽に調理が可能な「たこ飯の素」を商品化・販売。
5 佐賀県
唐津市
・呼子町漁業協同組合
・玄海活魚株式会社(活魚卸売業)
・連携参加者:株式会社キョーワ、有限会社浦川水産、佐賀県中小企業団体中央会、唐津市、
・サポート機関:九州大学、佐賀県玄海水産振興センター、地域活性化支援事務局
【農商工連携】
・呼子イカ東京マーケット販路開拓搬送事業:これまでは実現できなかったケンサキイカを活きたまま東京へトラック搬送する技術を活用し、酸素充填包装後レストランなどへ梱包配送する新搬送システムにより販路開拓を行う。
・平成18年〜20年にかけて唐津市、九州大学、呼子町漁協、佐賀県玄海水産振興センター、佐賀県玄海漁業協同組合連合会、地場企業の産学官連携による技術開発を進め、東京までの搬送技術を確立した。これを背景として、イカの活魚販売を行う玄海活魚(株)と呼子町漁協との連携を核にして事業化することとなった。
6 ・アミタ株式会社 【CSR活動(人材育成等支援)】
・CSR活動としての環境に配慮した漁業を認証するMSC認証、農林水産業の人材育成支援活動

漁村地域と企業・大学との連携についての現状及び整備する情報の活用について

漁村地域と企業・大学、収集する情報の活用方法について以下のように考えます。

連携事例の特徴
  • 市町村と大学との連携協定が締結されて、各種連携取組の一つとして、水産業の振興(ブランド化)、水産物・資源管理等に関する共同研究が実施されている。
  • 具体の漁村地域(または漁協)と大学との直接連携している事例は少ない。市町村が仲介、または市町村が主導として大学と連携する中で、漁村地域(または漁協)が協力する形が多い。
  • 企業のCSR活動としての漁村地域との連携にあっては、人的支援(ボランティア)、金銭的支援(協賛金)、及び環境保全活動としての関わりが多く見られる。
  • 大学、企業ともに農(魚)商工連携での新製品開発、ブランド化、新流通開拓などの取組を成功している例が見られる。
情報収集方法
  • 大学との連携においては、既調査において情報データベースが構築されており、これらデータベースを活用することで、情報を入手することが可能であるが、過年度の取組など、現在において実施されていない活動内容も多く、情報の更新が求められる。
  • 企業CSR活動としては、環境保全面での連携が多く、直接的な漁業振興での連携取組は、CSR活動の趣旨からは行われていない。一方で、漁村地域にあっては、漁業振興に取り組む際の連携先を求めており、情報内容にギャップが見られる。
  • 漁業振興につながる分野での大学・企業との連携にあっては、先進的取組、開発の分野であることから、秘密裏に行われることが多い。そのため、連携先を模索している大学・企業の情報を集めることが困難となっている。
情報発信の方法
  • 本事業にあっては、ホームページによる連携事例の情報発信を基本としている。
  • 情報を入手したい漁村地域側が、いかなる情報を入手したいのかについての把握が今後の課題である。漁村地域側が必要な情報を検索できる情報発信の仕組みづくりを検討する必要がある。
PAGRTOP